ITサービス産業は内需依存型ではあるが、大型のシステム投資案件のオーナーは日系でもグローバル企業であることが多いため、国際的な金融、経済情勢の影響がダイレクトに情報システム投資予算に反映される。そしてそれは結果として、ITサービス企業の収益にも影響する。また、システム開発において利用されるコア・パッケージの大半は、米国から輸入されたものであるため、この産業は外的要因の影響を非常に受けやすい。米国のサブプライムローンに端を発する現在の金融不安から察するに、ここ数年の間はシステム設備投資に対する好材料はでてこないだろう。
一方で、ソフトウェア機能をネットワーク経由で提供するSaaSの登場や、外資系ソフトウェアベンダーのSIer化にも注目しなければならない。SaaSの普及により既成のソフトウェアをネットワーク経由で利用する企業が増えれば、これまでスクラッチ開発を軸に事業を展開してきたSIerの業績は圧迫されてしまう。 また、従来はソフトウェアの開発、ライセンス販売のみに特化し、販売代理店を経由してエンドユーザーに導入してきた外資系ソフトウェアベンダーが、商流を直販化する傾向にある。製品の導入支援を担うサービス部門の人員を増やし、販売後の導入作業自体も単独で行われるケースも増えてきた。これにより、SIerだけでなく、ERPなどの特定分野でのパッケージ導入支援で大きな収益を生んできたITコンサルティング・ファームの事業領域も圧迫されることになる。
こういった背景から、今後はひとつのシステム開発案件に対して、製品提供元としてのソフトウェア・ベンダーや、要件定義、上流設計者としてのコンサルティング・ファーム、そして開発者としてのSIerといったすみ分けがなくなってくると推測される。情報システム産業全体の淘汰が進み、ITサービス産業全体でのM&A、合従連合が加速化する中で、事業領域を越えた転職者が増加していくであろう。技術者にとっての企業選択の基準も、これまでのようなSIerやコンサルティング・ファーム、もしくはソフトウェア・ベンダーといった括りから、個人の専門性、ソリューションの領域を軸とした企業選択にシフトし、これまであった事業形態のボーダーラインを超えて専門性を競い合う時代に突入する。
このような状況下で、エンジニアに求められるのは、専門性であると私は考えている。エンジニアに、専門性があって当然なのは今に始まったことではない。しかしこれからは、もっと 「自分の専門性」を自分でブランディング していかなければならない時代になってくる。 自分の専門性に据えるべき領域探しこそが重要な作業であり、時代の流れを読みながら「本当に価値のある領域」での専門性を、絶えず自分の力で開拓していかなければならない。
ITビッグバンを経て本格的な競争社会が到来している中、システム開発業界の人事もUp or Out な制度と化していくことは十分に予測される。この激しい技術者の人材価値競争にエッジの効いた専門性で勝利する。もちろんマネジメント層を狙えるはずだ。欧米のIT企業では、マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏などをはじめとしたコーポレート・エグゼクティブも、始めは高い専門性を武器にキャリア・アップし、後に起業、もしくはマネジメント職に就いている。
価値ある専門性は、あなたがどんな道を選ぶにしても、強力な武器になる。今あなたがエンジニアとしてすべきことは、自分の専門性とその将来を描けているかどうかを自らに問いかけてみることだろう。